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やくざの詩

やくざの詩

小林旭

やくざの詩

おすすめ度:

メーカー: 日活



日活ムードアクションの黎明
60年代後半に浅丘ルリ子と石原裕次郎のコンビで一世を風靡したいわゆる
日活ムード・アクションの萌芽をここに見る、というよりは、監督舛田利雄的フィルム・
ノァールの傑作。
狭い裏社会で複雑に絡み合う人間関係、登場人物夫々が心に傷をもち、それ
に耐え切れずもがくとき、あらゆる才能に秀でる主役小林旭といえども、自ら
その過去の重みを断ち切ることをなしえない。そんななかヒロイン芦川いづみが
辛うじて提示するモラルもそれ自体では何の力も持ち得ない。偶然のみが人々
を傷つけ、あるいは救うのである。静かに凪いだ海を見つめながら「喜びや
悲しみなんてもんは、(この海は)みんな飲み込んで知らん顔」と呟く小林の
台詞に、1960年のこの時点で一方では既に日本軍の中国での細菌戦への
関与に言及しつつ、人間一人一人のちっぽけな悲しみをこそ本当の主題と
する山田信夫のシナリオをの良心が強く宿る。
そしてそれを陰影の濃いタイトなショットを重ねる藤岡粂信のキャメラが捉え、当時飛ぶ
鳥落とす勢いであった流行作曲家、中村八大(小林のピアノ演奏の吹き替えも)
のジャジーなメロディーが彩り、そしてなにより随所にちりばめられた舛田一流の
象徴的かつ省略的な演出が、見るものを強くこの世界にひき付ける。
このような傑作がゴロゴロしている当時の日本のプログラム・ピクチャーがしかし
本当の意味で再検証されるのはいったい何時になるのだろう。


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